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(智則+詞紀)
「ねえ、智則。私は、あなたのために何をすればいいの?」
「……どうしたんだ、詞紀」
突然問いかけた質問に対して、瞬きを忘れたような凝視だった。
そういうことは口にすることではない、と分かってはいるが、聞かずにはいられない気持ちが詞紀にはあった。
智則は玉依姫の影として、自分の心を殺して季封を支えていた。その心に詞紀が気づいたのは遅く、遅いと思えば思うほど、こうして恋人となってからも、もしかしたら自分はまだ彼に何も返していないのではと不安になるのだ。
一方、智則はしばらく詞紀の顔を見張ってから、ほどけるように笑みをこぼして、
「お前は、そんなことを考えなくていいんだ。俺が、子供の時から一方的に思っていただけだから」
「……でも、それは、その思いを返せないのは悲しいわ」
「悲しい? それは困ったな」
智則こそ悲しそうに笑った。そういう顔を見たいのではないのに。
胸を締め付ける痛みを覚えて、ちょっと目線を下ろしてから、智則が口を開いた。
「だったら」
「何?」
「詞紀は、誰よりも幸せになってくれるといい。詞紀が幸せだと感じるぐらい、俺がお前を愛するから」
恋人の屈託ない笑顔を見て、詞紀は笑みを浮かべた。
――ただ、やはり彼の口ぶりでは「詞紀が」幸せになるように、と言っているのが気になった。
両腕を彼の右手へ伸ばして、両手でしっかりと握る。そして強い眼差しを向けて言った。
「――いっしょにね、智則」
一瞬、虚を突かれた顔になってから、智則は諦めたような笑顔で頷いた。